第5章 Umbrella【5】
家に戻り、ご飯とお風呂を済まし自室へ戻る。
明日提出の宿題を終わらすために机に向かいペンを走らせる。
そのとき、ふと部活中に田中に言われたことを思い出す。
『のこと好きなのか』
心臓が跳ねた。
そんなんじゃない。
好きとか……そんなんじゃ……。
そもそも俺なんかが彼女を好きになっていい立場ではないんだ。
好きになっちゃいけない。
俺はシャーペンを机に置いてベッドに横になった。
集中も切れたしなにより宿題もあと一問解けば終わりだ。
最悪明日の朝解けばいい。
腕で顔を覆い大きく息を吐いた。
俺のこの気持ちはきっとあの頃と同じ。
中学の同級生。
高校の同級生。
部活の仲間。
仲のいい女友達。
それだけ。
それだけでいいはずなんだ。
なのに、どうしてこうも田中の言葉が耳にこびりつくのか。
意識をしてしまったのか。
違う。
俺のこの気持ちは罪悪感でいい。
贖罪でいい。
俺は唇を噛みしめた。
必死に蓋をした。
気付いちゃいけない感情。
気付きたくない感情。
また俺は、逃げた。
そのことに気づくのは3日後のこと。