第5章 Umbrella【5】
ガツンと大きな衝撃が体中に駆け巡った。
死ぬつもりだったって、それって自殺をするつもりだったと言う事だろうか。
うまくまわらない思考回路。
彼女は言葉を紡ぐ。
「だけど縁下くんは来てくれた。一緒に帰ってくれた」
ゆっくりと俺の手を握る。
彼女をみると彼女は泣いていた。
いくつもの涙を零して。
「私の手、離さないでいてくれた。だから私は死ぬのをやめたの」
彼女は小さく謝った。
彼女が謝る必要などどこにもないのに、何度も何度も謝った。
「私のせいでこんなにも傷ついていたんだね。こんなにも苦しんでいたんだね」
「ちがっ……!!傷つけたのも苦しめたのも俺だ。俺が君を助けてあげられなかったから……」
「いいよ、もういいよ。またこうして会えた。またこうして一緒に帰れる。それだけでね、私嬉しいんだ」
その言葉に俺は何も言えなくなった。
どうしてそんなことが言えるんだろう。
彼女の強さが、弱さが痛いほど胸に沁みる。
泣きじゃくる俺をは優しく抱きしめてくれた。
その温もりにまた俺は涙を零した。
どのくらい泣いたかはわからないが、その後気恥ずかしくなってしまっての顔を見れずにいると、彼女は白い歯をみせて笑っていた。
肩を並べて歩いた帰り道は、あの日とは違って穏やかで柔らかかった。