第3章 Umbrella【3】
そして夏合宿の日。
森然高校へやってきて割り当てられた部屋へ向かう。
リュックを背負ってきょろきょろと目線を動かしているに気づき、部屋の場所がわからないのかと理解して連れて行こうとしたが、森然と生川と梟谷のマネージャーが彼女の手を引いていた。
その様子をみてホッと胸をなでおろす。
「なんだ黒尾、お前あの子のこと好きなのか?」
後ろから声を掛けられて心臓が跳ねる。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた木兎がいた。
なんでわかんだよと心の中で突っ込む。
それと同時に肯定したらめんどくさいと言うのもあって、適当にあしらったが、
「なんだよ、隠すことないだろお!」
「隠してねえよ。妹みたいな感じだっつてんだろ」
「だってお前すげえ優しい目であの子の事見てるからさ~」
木兎は呆れた感じでため息を吐く。
まさかお前に呆れられる日が来るなんて思わなかったよ。
これ以上隠したところでもっとめんどくさくなることは目に見えているし、木兎の隣にいる後輩らしき少年も小さく頷く。
え、なに。
俺あった事もない梟谷の後輩にも俺の気持ちバレてんの。
溢れすぎでしょ、俺の気持ち。
「あ、こいつ赤葦ってんの。俺の後輩」
「見りゃわかる。黒尾鉄朗です」
「赤葦京治です。今日はよろしくお願いします」
かなり礼儀正しい子だ。
木兎の世話係か何かか。
なんて失礼なことを考えながら、体育館へ向かう。
荷物を置いたらすぐに練習が始まる。