第3章 Umbrella【3】
それから数か月経って、夏がやってきた。
結果を言えば、俺は未だに告白できていない。
怖気づいた。
ただそれだけだ。
フラれるのが怖いわけではないとか言っておきながら、彼女に、に拒絶されるのを想像してしまったら足がすくんだ。
情けねえと思う、まじで。
3年生も引退して、彼女をいじめるやつはいなくなった。
が少し変わった女の子だと言うことはバレー部員全員知っているが、正直部員全員変わっている連中ばかりだから、誰も何も気にしていない。
そのためか彼女は毎日楽しそうにマネージャー業務をやっている。
楽しそうな笑顔を見る度心臓がホッとする。
これでよかったとさえ思う。
「来週から夏休みに入るわけだが、それに伴って毎年恒例の合宿を行おうと思う」
コーチが一枚の紙を見ながら業務連絡を話す。
もうそんな時期かと頭の中で考えると、浮かんでくるのはうるさい梟のこと。
乾いた笑みを浮かべていると、俺の隣に立って話を聞いていたのことが気になってちらりと見る。
最近知ったのは、彼女は人ごみが苦手だ。
中学の時は意識していなかった"他人の目"が高校に上がってから意識してしまうようになっていた。
無理して参加しなくてもいい、なんて言えなかった。
強制参加なこのイベントはマネージャーも同様だ。
だけど、もし少しでも異変があったら即帰らせよう。
それだけは部員にも監督やコーチにも話しておかなくてはいけないことだ。
部活が終わるとすぐ俺は監督とコーチの所へ向かって、そのことを話した。
二人は快く承諾してくれたし、部員にも話せば彼らもまた二つ返事でオーケーが出た。
「でもたぶん、心配する必要無いと思いますよ」
と山本が着替えながら言ってきた。
同じクラスではないにしろ、同学年なため部活がない日中はよく休み時間や昼休みに話すらしいが、変わった様子はないと言う。
それが本当であればいいと思うが、山本も山本でそう言うのには敏感な男だから大丈夫なのだろう。