第1章 『Trade 2→9 』影山
頑なな俺の態度に観念したのか、は玄関で靴を脱いだあと、丁寧にそれを向きを変えて揃えた。
家には誰もいないけど、とりあえず俺の部屋に通すことにする。
俺の部屋は、俺が家を出たあともそのままの状態で残されている。
自分自身も久しぶりにこっちに帰ってきたから、この部屋も懐かしい。
「適当に座れよ。何か飲むもん持ってくる。」
「あ、いや!お気遣いなく!もう、すぐ帰るから!」
「何でさっきからそんなに帰りたがるんだよ。そんなに俺と話したくねえか。」
「え?!そんなこと誰も言ってないじゃん!だって、家とかなんか緊張するしさ……それに。」
「?」
は、少し寂しそうな表情で呟いた。
「影山くんは、全日本のスターだから。もう自分なんかとは住む世界が違う人っていうか。ずっと会ってなかったから余計そんな気がしちゃって。」
「………。」
「テレビの試合で影山くん見るとね、いつも思ってた。私、ほんとに高校のとき影山くんと毎日一緒にいたのかなって。そのくらい影山くんは凄いから……遠くなっちゃったんだよ、私の中で。」