第3章 決断
横浜に着き、私たちは船に乗り込む。
部屋を案内されると斎藤さんは私に服を脱ぐように命令する。
いかがわしいことでもするのかと思いきや、どうやら傷の手当てをするという事らしい。
「ガキの身体に興味はない」
すっぱり言われて確かに斎藤さんから見れば私はガキでしかないけれども、一応はもう10代後半であることをわかってもらいたい。
巻いていた包帯は血が滲んでいて、歩いただけで傷が開いてしまうようでは本当に私は足手まといでしかない。
一刻も早く治さなければ。
「この薬を使うといい、よく効く」
「これは……?」
「昔の戦友のやつが余っていただけだ」
私は小さな缶を受け取り、わき腹に塗った。
昔とはやはり幕末時代の頃だろうか。
その時の戦友で薬と言えば一人しか思いつかない。
私は受け取った薬を再び見つめる。
そしてそれを大事に懐にしまった。
この先何度かお世話になるだろう。
「今日はもう休め。傷に触る」
ぶっきらぼうで言葉使いが荒い人だけど、斎藤さんも日本の未来を想う一人なのだと実感した。
そうなのだ。
そうでなければ緋村さんを京都に行かせて志々雄真実と戦わせたりしない。
自分も死闘になるとわかっていながら京都に行こうとはしない。
やり方は違えどこれからの日本を想う人たちがこの時代にいて、その人たちが築き上げた日本が平成の世なのだとしたら、その思いを背負って生きて行かなければこの人達に面目が付かない。
でも私はそれを裏切った人間なわけだけれど、でも今は違う。
私はこの時代を生きている。
これからの日本を想う気持ちは私にもある。
だったら今この時代で私ができることをやるしかないんだ。
これから先の日本を想って。