第2章 療養
何時までも落ち込んでいたら、何だかあの男の人達に負けてしまったみたいで嫌だから。
気持ちだけは負けたくない。不幸だと落ち込んで、泣き暮らすのだけは嫌だと思った。
「貴女は強いのですね」
セルナール様の言葉に私は笑って見せた。
「だって、悔しいじゃないですか。何時までも落ち込んでいられませんよ」
「貴女は本当に…相変わらず強いのですね…」
呟くように言われて、私はその言い方が気になり首をかしげた。そんな私に気付いたのか、セルナール様は何でも有りません、と綺麗な笑みを私に残して立ち上がった。
「まだ、当分はゆっくりしていて下さい。余計なことは考えず心と体を癒すことだけを考えて…お大事に」
「セルナール様、どうも有り難うございました」
私は扉へと向かうセルナール様に頭を下げた。
あぁ、こんなにセルナール様と二人きりでお話しできるなんて…これだけで私は幸せだと思えた。
今日のことを心の支えに私は強く生きて行こう!今日のことは絶対に忘れない。
例えもうセルナール様とお話が出来なくなったとしても!
と、思っていたのに何故だろう?今隣にセルナール様がいらっしゃいます。
「ハルラさん、もう一つ食べますか?」
「はい、食べまふ」
私は何故かセルナール様の剥いてくれる林檎を頬張っている。林檎はもれなく一分の隙もない可愛らしいウサギちゃんの形をしていた。
むむ、私より上手いのではなかろうか。
林檎を剥くセルナール様はウキウキと言った面持ちでとっても楽しそうだ。何故?
実はあれから毎日セルナール様が部屋に来てくれている。クッキーを持ってきてくれたりマカロンを持ってきてくれたり、今日は林檎だ。
昨日、そろそろ仕事に戻りたいと言ったら怒られた。「何を言っているのですか!体は良くなっても、心が回復したとは言えません。もう少しゆっくりしていなさい」と言われて、つい甘えてしまっている。
「先週、街に美味しいケーキの店が出来たそうですよ明日はそれを持ってきましょうね。明後日は有名なチョコレートを取り寄せているのですが、それが届くはずですのでそれを持ってきましょう。明々後日は…」
…セルナール様、私は一体何時までここに居るのですか?
いや、楽しいし嬉しいし美味しいので有り難いのですが、そろそろ動かないと太ってしまいそうで…ね?