第20章 未来への扉
いよいよ当日。
区役所に婚姻届を出し、会場へ。
『夜久君、夏希ちゃん!』
早瀬は、入り口で待っていた。
『早瀬ちゃん、いよいよ今日がきたー!
どうぞ、よろしくお願いします。』
『夏希ちゃん、おめでとう。
今日まで準備、頑張ってきたもんね。
…私はね、もう、
今日は二人を見守るのが仕事なの。』
『…そうなの?』
少し、不安そうな顔をする夏希。
『そう。でも大丈夫。
今日は、それぞれのプロが
全力でサポートするからね。
夜久君、挨拶に行こう。』
…普段は、そんなことは、しない。
小さな声で聞いた。
『おい早瀬、本番前に入って大丈夫か?』
『もし夜久君さえよければ、
舞台裏、夏希ちゃんに見てもらわない?
一応、みんなには声はかけてあるの。
夜久君達が、
本番前に挨拶に来るかも、って。』
『そりゃ、邪魔にならなければ…』
いつもの仕事仲間だ。
挨拶できるなら、しておきたい。
『でしょ?
よし、お仕度前に、行っちゃお!
夏希ちゃんも一緒に
結婚式の舞台裏ツアーに出発!』
厨房には
ずらりと並んだ皿を前に動く
何人もの白いコックコートの
料理人たち。
会場では、サービススタッフたちと
それを仕切るキャプテンが
てきぱきと会場内をセッティング中。
台車を押しながら大量の花を飾り付ける
花屋さん。
準備風景から撮影してくれてる
映像班のみんな。
リハーサル中の音響照明、司会者さん。
チャペルには聖歌隊や介添、司式者さん。
玄関には、ゲストを案内してくれる
ベルマンとインフォメーションスタッフ。
『今日はお世話になります!』
と声をかけると、
みんな、忙しい時間にもかかわらず
『夜久君、おめでとう!』
『今日は、仕事は忘れろよ~。』
『こっちは任せてね。』
『飲み過ぎるなよ(笑)』
…と、笑顔で返事してくれる。
そして、控え室に着くと、そこには
着付けスタッフとヘアメイクを取り仕切る
花巻君。
前撮りの時からずっとお世話になっている
写真担当の、花巻君の奥さん。
…そして、早瀬。
50人近くのスタッフが
今日を支えてくれる。
みんな、俺の信頼する仕事仲間。
俺も、その一員。
ヤバイ。既に泣きそうだ(笑)