第20章 未来への扉
結婚式の前の夜。
明日は婚姻届を出してから
会場へ向かう。
最後の準備を済ませ、
少しだけ、二人で乾杯した。
…あのデートの時に買ったワイングラスで。
『緊張、するかな?』
『どうだろ?
俺も、前に立つのは初めてだからな。』
『…ほんとに明日、結婚式なんだね。』
『やっと?あっという間?』
『どっちも。
…っていうか…初恋の人と結婚出来るって…
夢みたいだな、って。』
『夢じゃないよ。』
テーブル越しに、キスをする。
『なぁ…しよ。』
『え?ヤダ~。キスマークとかついたら
明日、着替えるときに恥ずかしい。』
『つけないから!ちょっとだけ。』
『…明日の夜でいいじゃん。』
『それとこれとは全然別!
今夜は、独身最後のセックス。
明日は、夫婦になって最初のセックス。』
『…独身、最後…ホント、そうだね。
独身最後の夜なんだね。』
『明日からは、夜久 夏希だから。』
『…そっかぁ。
今日まで彼氏で、明日から夫、なんだね。』
『そうだよ。
今日まで彼女で、明日から妻、だよ。
だからさ、彼氏と彼女で最後のセックス、
しとこうよ…』
夏希も、頷いてくれた。
少しだけ。
やさしく。
でも、深く、深く。
今までのことを思い出しながら
一回だけ繋がって…
手を繋いで、眠った。
明日からも、同じ毎日。
でも、明日からは、家族。
特別な夜は、
こうして更けていった。