第20章 未来への扉
もうすぐ春、という季節に
準備は始まった。
話し合って話し合って
90人ちょっとに招待状を出した。
家族、親戚、幼馴染みに同級生、
もちろん音駒の仲間たち。
働きはじめてからのつきあいの人。
近くの人、遠くの人。
よく会う人、久しぶりの人。
招待状に封をしながら話す。
『こんなに、
会いたい人に1度に会える日は
きっと人生で1日だけだね。』
『そうだな。たった二時間半だけど
楽しんでもらいたいな。』
『写真、たくさん撮りたいね。』
それからは、選択の連続。
春と夏の間には出欠も揃い、
座席を組むのに一苦労。
引き出物は、
六パターンの組み合わせを準備した。
夏には、衣装を見に行き始める。
『ねぇもりすけ、どっちがいいと思う?』
『んー…左?』
『えーっ?右の方が可愛くない?』
『じゃ、聞くなよ(笑)
好きな方にすりゃいいじゃん!』
『わかってないなぁ、
意見じゃなくて、後押ししてほしいの!』
『知るか!』
…結局夏希が 何回、試着に行ったのか
俺は知らない。
俺?俺は、ぶっちゃけ、サイズさえあえば
何でもいいから(笑)
夏希の衣装にあうものを
適当に選んでもらった。
迷うことは、一度もなし。
衣装部もみんな知り合いだ。
俺が自分で決めるよりよっぽどセンスいい。
テーブルクロス、ナフキン、花、音楽、
ウェディングケーキ、引き出物入れの紙袋、
料理のランク、祝辞や乾杯の依頼。
席札や席次表のデザイン…
打ち合わせのたびに
一つ一つ悩みながら決めたことが
次の打ち合わせの時には
きちんとプランに取り入れられてて
少しずつ、当日のイメージが浮かんでくる。
決めるのは、ほとんど夏希。
俺は…まぁ、話し相手、というか(笑)
無駄に意見は言わない。
夏希がやりたいように。
夏希の憧れが形になるように。
夏希が幸せなら、それでいい。