第15章 100回目のプロポーズ
アキが、興味津々の顔をして俺を見てる。
コンタクト姿を初めて見た。
黒い瞳が眩しい。
あぁ、好奇心に満ちたこの顔。
事情をわかってくれてんのだろーか?
…コイツ、
空気よんだりできるタイプだっけ?
俺に、恥、かかせねーでくれよっ?!
『影山君、どーぞっ?!』
西谷さんからのもう一押し。
会場の人がみんな、
何事かとこっちを見てる。
その場の雰囲気に耐えられなくなった俺は、
ついに、
バンジージャンプでもするくらいの覚悟で
あの言葉を口にした。
短めに。
早口で。
もちろん小声。
『結婚、すっか?』
…小さな声で言ったはずなのに、
スピーカーを通して会場中に響く。
ぐわぁっっっ、
俺、なんでこんな、
あり得ねぇシチュエーションで
プロポーズさせられてんだ?!
てか、これ、何回めだ?
90回、越えたっけ?
あーっ、どーでもいい!
沈黙に耐えられねぇ!
アキ、早く、何とか言えっっ!!
『さぁアキさん、お返事は?』
田中さんが、アキにマイクを向ける。
…テレビ番組だったら、
多分この何秒かの間に、
俺の心臓の鼓動の音と、
みんなの顔が、
カットバックで写るんだろーな…
アキ、頼む。
もう、なんでもいい。
YesでもNoでもいいから、何か言え!!
(いや、出来ればYesがいいけど。)