第14章 祝福の拍手
あれ、
今日はなんだか早瀬さん、元気ないな、
…と思ったのは、
日曜日の練習の時のことだった。
みんなとも普通に話すし
マネージャーとしての仕事もいつも通り。
だけど…
視線がなんとなく違う、というか
ふとした表情に元気がない、というか。
とにかく、いつもの早瀬さんじゃない。
具合でも悪いのかな?
練習のあと、
ドリンクキーパーを洗う早瀬さんの横で
たまたまのような顔をして
俺も手を洗いながら、
『ちょっと元気なくないですか?』って
声をかけてみたけど、
『ゆうべ、遅くまでテレビ見てたから
ちょっと睡眠不足かな?』なんて
はぐらかされた。
そんなんじゃないはず。
でも、かける言葉が見つからない。
自分が立ち止まったとき、
俺はいつも、
高校時代の先輩や仲間のことを思い出す。
大地さんや菅さんだったら
きっと、すぐに心に寄り添う言葉を
かけてあげられるんだろうな。
ツッキーだったらどうするだろ。
他人に興味ないように見えて、
毒舌なように見えて、
実はツッキーは、ちゃんと優しい。
それは俺が一番よく知ってる。
日向だったら?
日向の言葉は、裏表や計算がない分、
相手の心に真っ直ぐ届く力がある。
それも俺はよく知ってる。
俺は?
俺はこんな時、
何を言ってあげたらいいんだろ?
…帰ってからも、
翌日、仕事をしながらも
早瀬さんの元気のない顔を思い出しながら
ずっとそのことを考えていた。