第15章 月島くん。
春高も終わり、3年生が引退してしまってから早一ヶ月。
2月の一大イベント、バレンタインデーが迫っていた。
私は毎年、男の子には特にあげる相手もいないので専ら友チョコの方が主になっていたのだけど、今年はそれに義理チョコも加わる形になる。
部のみんなにあげるチョコを多めに作ろうと決めていた。
どんなものを作ろうかな。
そんなことを考えながら部室でバレンタイン特集の載っている雑誌を眺め、一人で考えを巡らせていた。
そこに、一番乗りで月島くんがやってくる。
「あ、月島くん。」
「何。」
甘いものといえば、やっぱり月島くんである。
月島くんに何が食べたいか聞くのが一番良いかもしれない。
「もうすぐさ、バレンタインだねー!」
「………だから?」
月島くんは、私の言葉に短く返答をしながら支度を始めている。
なんともそっけない。
でも、彼はここ数ヶ月で随分変わったように私は思う。
夏合宿での木兎さんの言葉を受け、そこからバレーにハマる瞬間を模索し続けた彼は、以前と比べると見違えるくらい熱くなった。
相変わらず社会人チームでの練習も続けているようだし、3年生が抜けて新体制になる烏野にとって本当に頼もしいメンバーの一人だ。
黙々と準備をすすめる彼に、私は言葉を返す。