第14章 大地さん。
「大地さん………」
「……………」
呼びかけても反応がなかった。
その目は変わらず、コートを見つめたまま。
今、何を考えてるの?
さっきの試合での自分のプレーを後悔してる?
それとも、バレー漬けだった3年間を、今日までの自分を思い出している?
いつもどっしり構えて私達を安心させてくれていたその背中が、今はやけに小さく見えた。
ずっと情熱を傾けてきたものを失う瞬間を、私は知らない。
だから、彼の気持ちを本当の意味で理解してあげられないことが苦しかった。
何度声をかけても反応がないため、私は彼のユニフォームの裾を引く。
それに気付いた大地さんが、ようやくその顔をこちらに向けてくれた。
けれど、その目は光を失ったようにすら見える。
いたたまれない気持ちのまま、私は口を開いた。
「大地さん、行きましょう。もうみんな先に行きました。」
「ああ…………悪い。」