第12章 影山くん。
「菜月。」
「ん?」
「俺はお前に、俺を選んだことを後悔はさせないつもりだ。」
影山くんによって右手が握られた。
「でも、俺はやっぱりバレーあってこその俺だ。それがなければ俺じゃない。…だから、これからも側で俺のバレー人生を支えてくれないか。」
真剣な瞳と言葉に、思わず彼に見とれる。
会えない辛さも寂しさも、すべて彼あってのこと。
その彼のかけがえのないものがバレーなのだから、彼を大切に思う自分が応援しないのは嘘だ。
それに、私はバレーをしているときの影山くんが、本当に、本当に大好きだから。
「うん、もちろん。」
プロポーズのようなその言葉に、イエスで答える。
その直後、温かい体温に包み込まれた。
季節はめぐり、影山くんと出会った日からもうすぐ一年になる。
あの時感じた始まりの予感が再び私の心を駆け抜けていた。
これから影山くんと過ごす2度目の、春が始まるー。