第11章 菅原先輩。
後日、卒業式のあとで清水先輩に会った時、例の件を謝られた。
「ああでもしないと菜月ちゃん、自分の気持ちに気付きそうもなかったから見ていられなくて。ごめんね。」
でも、そのおかげで私は大事なことに気付くことができたのだから、むしろ感謝しなければならない。
式の後、先輩は何人かの女の子に第二ボタンを求められたようだったけど、すべて丁重にお断りしてくれたそうだ。
清水先輩が教えてくれた。
「ずっと片思いしてた女の子がやっと振り向いてくれたから、これはその子に渡すんだ、って。菅原、すごく嬉しそうだったよ。」
その言葉に私は赤面する。
先輩にずっと好きだと思ってもらえるような自分でいなくてはいけないなと改めて思った。
式の後、ほとんどの卒業生が学校を後にしたけれど、先輩はまだ残って私と私の教室にいた。
「もう、校舎内で会うのはこれで最後だな。」
「そんな寂しいこと言わないでください…」
「別にこれからはいつでも会いたいときに会えるじゃんか。俺たち付き合ってるんだし。」
そういうことじゃないんです。
学ランの先輩が、ユニフォーム姿の先輩が、校舎内で、体育館で見られなくなることが寂しいんです。
もう一緒に帰り道を辿ることができなくなる事が、寂しいんです。