第11章 菅原先輩。
3年生のいなくなった体育館に、今日も私は足を踏み入れる。
心にぽっかりと空いた穴は、当分の間、埋まりそうになかった。
事実、先輩たちがいなくなってからもう2週間以上経つのに、私は未だに立ち直れていない。
こんなんじゃだめだと空元気を出そうとするも、なかなかうまくいかない。
私の元気が出ないとき、何かを失敗して落ち込んでいるとき。
これまでならいつの間にか菅原先輩が隣にいて、大丈夫か?と声をかけてくれていた。
その笑顔と優しさに、いつも守られていたことを今頃になって痛感する。
もうすぐ、3年生は自由登校の期間に入り、部活どころか学校にすらその姿を見せなくなる。
そして間もなく卒業だ。
この学校から菅原先輩がいなくなってしまう。
そう考えるだけで、私の心には寂しさがじんわりとにじむ。
先輩は早々に進路を決定し、秋の段階で推薦で県内の国立大に進学を決めていた。
堅実な先輩らしい。
学部は以前私と進路について話した時に言っていた通り、教育学部。
県内の割と近めの大学だからきっと家を出ることもないだろう。
「近いし、大学行ってからも練習見に来るべ。」
なんて笑って言っていたけれど、きっと大学生活が始まったら忙しいだろうし、そんなに時間は取れないだろう。
先輩に本格的に会えなくなってしまう前に、私は先輩に対していい加減自分の気持ちを伝えて答えを出さなければと思っていた。
でも、未だにはっきりとした結論には至っておらず、ただ無為に日々を過ごしていた。