第10章 「春」
春の高校バレー全国大会準決勝。
私達、烏野高校排球部の春は、幕を閉じた。
最後までどちらが勝つか分からない接戦だった。
マッチポイントを取ってはデュースに戻され、取られては取り返しの繰り返しで、最終セットは30点台に乗るぐらい激しいものになった。
永遠に続くのではと思われたラリーの中で、幕切れは突然訪れた。
相手のエースのスパイクが力強く烏野のコートに突き刺さり、それと共に響く笛の音。
しばらく現実のことなのかわからないくらいだった。
会場が一瞬しんと静まり、そのあとすぐに相手チームの応援団からの怒号が響き渡る。
烏野の春が終わった瞬間だった。
もう、このチームで公式戦に臨むことは二度とないんだ。
そう思って視界がにじみそうになったけれど、我慢して押し留めた。
私が先に泣くわけにはいかない。
俯き、敗戦をかみしめる仲間たちを前に、私は拳を固く握って涙を押し殺していたーーー