第8章 春への道
バスで青城まで向かった。
部活の時間帯にバスに乗ってどこかへ行くなんて、なんだか新鮮でわくわくした。
でも、いざ青城の校門前に立つと練習試合で来た時とは違い、堂々と入れる理由がないので何だかこれから犯罪を犯そうとしているような心持ちになってくる。
腰が引けている私に気付いたのか、影山くんが声をかけてきた。
「行くぞ。ナチュラルに行けよ。」
「それは影山くんに言いたいことなんだけどな…」
「…何か言ったか。」
「何でもないです。」
「俺たちはここの生徒だ。いいな!」
「はい!!」
そして、二人で青城の中に無事に侵入することに成功した。
影山くんは、人にナチュラルに行けとか言ったくせに自分のほうがよっぽどおかしなオーラを振りまいていて、すれ違う生徒たちに何度も振り返られた。
その度に冷や汗が噴き出たけど、何とかバレー部の練習している体育館前まで辿り着いた。
心底ほっとする。
小窓から中の様子を覗くと、及川さんの姿をすぐに見つけることができた。
周りには、大学生らしき少し年上の人達がいる。
OBとかかな?
会話の内容を聞こえる限り盗み聞きしていると、どうやら初めて会う人も多い様子だった。
そして間もなくそのOBのチームの中に及川さんがセッターとして入り、練習試合が始まった。