第7章 東京遠征
赤葦さんからの思いもよらぬ申し出に私は驚いた。
「君とはこのまま別れたらいけない気がしていて。……だめですか?」
その言葉に、私は首をぶんぶん横に振った。
そして、一旦近くのテーブルにお皿と箸を置いて自分の荷物を探り、適当なメモ用紙に連絡先を書きつけて赤葦さんの元へと戻った。
きっと今、携帯を出して連絡先交換なんてしていたら皆に冷やかされるだろうから、わざとそうした。
メモ用紙を受け取った赤葦さんは小さくお礼を呟き、用紙を几帳面に丁寧に折り畳んでポケットにしまう。
「連絡、するから。」
その言葉に笑顔で答えると、赤葦さんからは新しいお肉の乗った紙皿が返ってきた。
ちょうど追加がほしいと思っていた時だったので、ジャストタイミングだった。
人のことをよく見ているなあと、ついつい感心してしまう。
私はこういう時、ついつい自分が食べることに夢中になってしまって人のグラスが空いてたりだとか、そういうことに気付かない。
だから余計に尊敬してしまうのだ。
もう次にいつ会えるかもわからないので、今日は赤葦さんの言葉に甘えて世話を焼いてもらうことにした。