第4章 変化
「菜月、ちょっと来いよ。」
練習が終わって片付けも一段落したところで、影山くんに声をかけられた。
正直、さっきのこともあったのでどう対応しようかなと一瞬悩んでいたら、腕を掴まれてしまった。
「帰んぞ。」
「え!?私まだ着替えてないし…」
「別にジャージで帰ったっていいだろ!」
「あ、ほら、でも私帰りは菅原先輩と…」
私を引っ張って歩き出そうとしていた影山くんがこちらをぐるりと振り向く。
「菅原さんと帰る義務でもあんのかよ。お前は菅原さんの彼女なのか?」
「違います…けど…」
「ならいいだろ。」
またずるずる引きずられる。
影山くんはこういう時、本当に強引だ。
結局、荷物だけ部室から回収することを許された。
そのあとはまた、ずるずるとひきずられる。
なにこれ、王様全開。
口にこそ出さなかったけれど、私は心の中で密かにそう思っていた。
「な、何か……話でもある感じ?っていうか歩くの速いよ!減速するか離すかしてくんないとこけるー!」
影山くんは、少しだけこちらを振り返ったあと、ゆっくり腕を離してくれた。
「……さっきの、何なんだよ。」
「え?」
「かっこいいとかそういう言葉は、好きな男にだけ言えよ!勘違いすんだろうが!!」
例のごとく、影山くんに吹き飛ばされそうになる。
「現に西谷さんだってお前のこと…」
それだけ言うと直前の怒声が嘘のように押し黙ってしまった。