My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「では皆々様、今宵は私に娘の手解きを託されますよう」
優雅に群衆へと一礼すると、コツリと高級な革靴が舞台へと上がる。
シルクハットを脇に下ろして微笑み寄るマクドウォールの肌が、ふうわりと
波を打った。
「っ?」
「君に私が何者か、冥土の土産に持たせてあげるんだったね」
違和感に眉を潜める雪の背後で、身を屈めたリッチモンドは耳元に口を寄せた。
雪にだけ聞こえる声で囁く。
「教えてあげよう。私は三つの顔を持っていてね」
コツリコツリと、マクドウォールの歩む音が近付く。
「一つは、この屋敷の主。リッチモンド家の当主」
ざわざわと、微笑むマクドウォールの皮膚が波立つ。
「一つは、魔法使いの成り損ない。スクイブ」
ヴヴ、と振動を称えマクドウォールの額に浮かび上がる模様を目に、雪は息を呑んだ。
(逆さまの、星、模様…?)
霞む視界で悟る。
見覚えがあった。
向けられる視線も知っていた。
あれは。
あの眼は。
(AKUMAの、ペンタクルだ…!)
「そして、もう一つは───
AKUMAに餌を提供する、ブローカーさ」