My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
(…そうだ。今ならきちんと話、できるかも)
アレンと並べば監視のような目を向けてきていた、リンクもトクサも此処にはいない。
細く暗い路地裏にいるのは、雪とアレンの二人だけだ。
誰の目も気にせず言葉を交えることができる。
それこそ、ノアの話でさえも。
「…アレン、最初に…謝ってたよね」
「? なんの話ですか?」
「私が……ノアだって、わかった時」
唐突に切り出したのは雪だった。
恐る恐る、反応を見るかのように。
しかし言葉は止めなかった。
〝ノア〟
その名称を耳にした途端、アレンの顔色も変わる。
雪が独房から解放されてすぐ、コムイと共に向かったのは元帥やエクソシスト、教団の上層部の人間達が集う広間だった。
そこにはルベリエやサードエクソシストの姿もあり、重々しい空気が流れる中、コムイが皆に告げたこと。
それこそが雪のノアとしての正体についてであり、今後の対応策だった。
"皆、心して聞いて欲しい。ファインダーとして黒の教団に就いていた彼女───月城雪のことについてだ"
彼女はノアだ、と。
はっきりコムイが告げた時、雪は顔を伏せはしなかった。
司令室でノアのことを認めた時は、俯いてばかりいた頭。
コムイの反応が怖くて、神田の対応が怖くて、周りの空気を感じたくなくて、ただただ俯いて目を逸らし続けていた。
しかしその事実を受け入れても尚、共に生きようとしてくれた彼がいたから。
今度は真っ直ぐ前を向いていようと思ったのだ。
顔を上げてコムイの言葉を耳にしながら、眼下に広がる知った顔ぶれを見渡す。
怖くないと言えば嘘になる。
案の定、神田やラビやブックマン達を除いた、何も知らなかった者達の間で広がったのは動揺と困惑。
見るからに落ち着き無く足元をふらつかせるミランダも、驚愕の表情で言葉を失うリナリーも、悪を見る目を向けるチャオジーも、真正面から受け止めるのは想像以上の気力が必要だった。
そこで寄り添い味方してくれる者などいない。
だから一人で立っていなければ、と雪はただただ無言で足を踏ん張っていた。