My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「あんなに大きな籠だから、誰かが見つけてくれるよ」
「そしてその誰かにお菓子を全部食べられるんですよ…うぅ…」
「そ、そうかなぁ」
「絶対そうですって…」
だらりと垂れた白髪から覗く立派な悪魔の角が、まるで似合わない落ち込み様。
流石に苦笑いしつつ、雪はうーんと顎に手を掛けた。
「じゃあさ、私の貰った分のお菓子分けてあげるから。明日、一緒に食べよう?」
「え?…そ、そんな。それは悪いですよ」
そうだ、と顔を上げて提案すれば、引け腰気味に遠慮してくるアレンには、普段の食へのがめつさがまるでない。
「食に対して謙虚になるなんてアレンらしくないなぁ。これでも私も割と貰ってきたんだよ?戦利品」
「でも…」
「アレンも今朝、私にプリンくれたでしょ。それのお返し。…それとも私からのお菓子は要らない?」
「そんなことないですッ」
軽く首を傾げて覗き込めば、ぶんぶんと勢いよく首を横に振られる。
素直なアレンの反応に頬を緩めつつ、ぱさりと雪の尾は揺れた。
「じゃあ決まりね。明日非番でしょ?お菓子持ってアレンの所に遊びに行くから」
ふんわりと笑う雪の笑顔には、嘘偽りなどない。
神田との仲を知ってから、アレンが発見するようになった笑顔だ。
神田が引き出したものだと思うと悔しいが、それでも彼女の笑みにはつい目を止めてしまう。
心から笑っていて欲しいと思える、大切なホームの一人なのだから。
「……ありがとうございます」
もそもそと小さな声で礼を零す。
「いいよこれくらい。ユウは食べないから、私一人でお菓子全部食べることになるし。寧ろアレンがいてくれた方が助かる」
「…ぃぇ…それだけじゃなくて、」
「?」
「…僕と、変わらず接してくれることが、嬉しいから」
銀灰色の瞳は、煉瓦の床を見つめたまま。
ぽそりぽそりと、アレンは言葉を噛み締めた。
それがどういう意味なのか。
真意は汲み取れなくとも、なんとなく雪には伝わった。
「…それは私の台詞だよ」
抱えているものは、同じだったから。