My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
右に左、それから斜め。
足は迷いなく人の合間を進みゆく。
しかし不意に街中の真ん中で行進を途絶えた。
ぴこぴこと動く獣耳は些細な音を拾わんとするかのようにあちこちに揺れ、雪は辺りを見渡した。
(確か匂いはこっちに続いて…)
今度はゆっくりと、一つ一つ辿るように進む。
一歩ずつ進んだ足がやがて向かった先は、人混みから外れた街の路地だった。
街灯の光が及ばない、薄暗い路地裏を覗き込む。
「!」
夜目の効く雪の光る金瞳は、路地裏の奥に座り込んだ白髪の少年を見つけ出した。
路地裏のゴミ箱の前で座り込んでいる姿は、具合でも悪いのか。
頭を抱えているように見えて、雪は慌てて路地内へと駆け込んだ。
「アレンッどうしたの、大丈夫っ?」
「……?」
雪の声に反応を示したアレンの顔が上がる。
少し苦しげな、険しい顔のようにも見えた。
しかし駆けてくる人狼の姿を捉えると、ぱちりと瞬く瞳。
「……雪、さん?」
忽ちそれはもう"いつも"のアレンだった。
「何処行ってたの、捜してたんだよ」
「え?」
「ほら、皆も───…いない」
「?」
後方を振り返れば、傍らを飛ぶティムキャンピーのみ。
誰も知った顔のいない路地裏に、雪は思わず顔を渋めた。
リナリー達は人混みに阻まれでもしたのか、雪を追い掛けられなかったようだ。
「え、と。僕、また迷子に…?」
「その自覚もないの。それは問題っ」
「ご、ごめんなさい」
何処か朧気にも見えるアレンの曖昧な態度。
まるで寝起きの寝惚けアレンのような錯覚に陥りながら、頭を下げる彼にそれ以上強くは責められなかった。
「いいけど…見つけられたから。でも大丈夫?人酔いでもした?」
「ぁ……ハイ。少し、気分が悪くなってしまって。休んでました」
「そっか。今は大丈夫なの?水か何か欲しいものある?」
「いえ、もう大丈夫です」
視線を合わせるように屈み込む雪に、笑顔を返す。
そんなアレンは不調には見えない。
(……あれ、)
しかしその笑顔には見覚えがあった。
(無理して笑って、る?)
笑いたくもないのに笑う、その顔だ。