My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「待って…ッユウっ」
「チンタラしてんな、さっさと歩け」
「だから鎖引っ張んないでってばッ私は犬!?」
「犬っころだろ。何処をどう見ても」
「犬違うから狼だからって何度言わせるかな!」
「大差ねぇよ。それよりお前、簡単に鎖取られんな。あんなガキ相手に」
「その子供相手にユウは大人気なさ過ぎだから。今の格好で凄むと威圧半端無いんだから、怖がらせたら駄目だよ」
「仕方ねぇだろ。お前が危機感ねぇんだから」
「危機感?…あれのどこが危機?」
足早に進んでいた神田の速度が緩む。
やがて止まる足に、振り返った顔を雪もまた足を止め不思議そうに見上げた。
幼い子供相手に危機感も何もないだろうに、何を言っているのかと。
「今の自分の姿をちゃんと自覚してろ。あんなガキに遊ばれんな。お前にとってはただの戯れでも、俺は気に入らない。鎖で他人と繋がれたお前の姿なんざ」
今度は余裕を持たせた上で、軽く鎖を引く。
神田の言葉の中には、恐らく雪が独房に繋がれていた時の出来事も入っているのだろう。
それがわかったから、雪も何も言い返せなかった。
「お前を所有化する気はねぇが、縛られんなら俺に縛られてろ」
「…………何、それ」
きっぱりと告げられる言葉に、雪の顔に赤みが差す。
そんなこと言われずとも、もう縛られているというのに。
(時々、ド直球なこと言うんだもんなぁ…心臓に悪いよ)
アレンのような優しい言い回しでも、ラビのような気遣いある言葉でもない。
飾らない言葉だから胸に直接突き刺さるのだと、雪も長いこと神田の傍にいてようやく悟った。
「ユウだって…自分の姿、ちゃんと自覚してよね」
そして、想うだけでは駄目なことも。
お互いを理解していれば言葉は必要ない、なんてことはない。
声を発し、音を伝え、名を呼び、愛を囁く。
それもまた必要なことなのだ。
それもまた、大切なこと。
「今のユウ、無駄に格好良いんだから…あんまり女の人に近付いちゃ、だめ」
ぽそりぽそりと恥ずかしげに伝えてくる雪の本音に、今度は神田の目がぱちりと瞬く番だった。