My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「おい、ガキ」
本日三度目。
ぬっと再び影を作りながら、伸びた大きな手が喚く男児の頭をがしりと掴む。
先程の気配とは比べ物にならない威圧に、スイッチが切れるかのように男児と母親の声が途切れた。
「そんなに欲しけりゃ俺から奪ってみせろよ」
腹の底から這い出るような低い声。
ギロリと瞳孔をかっ開いて脅す神田の姿に、ひゅっと掠れて息を呑む。
泣き声の一つも上げることを許さないまま、男児の手から鎖を毟り取った。
「それができねぇなら本物の犬っころで我慢してろ」
「ュ、ユウ何を…ぅえっ!?」
「邪魔したな。行くぞ」
「ぅぐっ待…っ引っ張んないで…!」
背を向けると鎖を引き足早に去る神田に、転げそうになりながらも付いていく雪。
唐突に向けられた威圧に、バクバクと胸の内側で鳴る心臓を抱えたまま、女性はぎゅっと我が子を抱きしめた。
「ダニー…残念だけど、もう飼い主がいたみたいよ…」
どうやら彼女は野良ではなかったらしい。