My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「やっぱお前とはソリ合わないさー。狐みたいに仮面付けて周りに媚売ってそうな奴」
「そんな滅相もない。寂しいと死んだフリをする、兎の狡賢さには到底及びませんよ」
(…どっちもどっちだよ…)
とはラビの手に口を塞がれているから突っ込めず。
突っ込めたとしても突っ込みたくはない。
神田とアレンが犬猿の仲ならば、ラビとトクサは兎と狐と言った所だろうか。
どちらにしろタチが悪い。
「んんっ!」
「あ、悪い」
その場の空気を止める意味で、パシパシとラビの腕を叩く。
するとすんなり手は離れ、雪は大きく空気を吸い込んだ。
「とにかくこんな所で騒ぐのはやめようよ、目立つから」
「へいへい。朝飯行くんだろ?オレも一緒してい?」
「うん、いいよ」
すんなりといつもの空気で話し交えられるのは、やはり相手がラビだからか。
雪が檻に入れられている間、一番多く接触したエクソシストはラビだった。
その間、彼はブックマン一族としての立場で雪と関わっていたが、それでも彼が向けてくる目は仲間であった時と変わらないもの。
(ラビのこういうところ、凄いなぁ)
雪がノアだと知り、それでも教団に身を置くことが決定したとしても。
以前と変わらずこうして接してきてくれるラビは、極々自然で違和感など一つもなかった。
神田を除くエクソシストの中で、迷いなく一番と言える程に、変わらない態度を貫いてくれている。
そこには感謝しか浮かばない。
「ありがと、ラビ」
「? 何が?」
「んーん。言いたくなっただけ」
「なんさそれ」
止まっていた足を再び進め、広い廊下を食堂へと向かう。
並んで隣を歩くラビへと笑いかければ、深くは聞かずとも彼もいつもの砕けた笑みを返してくれた。
この息のし易い空気は、やはり彼だから作れるもの。
神田とは違う意味で、ラビの存在は雪にとって貴重なものだと言えよう。
「んでさ、雪」
「ん?何」
「なんさその格好」
「……ラビもそれ言う?」
がしかし。
顎に手を当ててまじまじと見てくるラビの言葉に、つい眉間に皺が寄ってしまう。
デジャヴ。
反対側をついて歩く狐の彼と、同じ言葉だ。