第15章 extra xxx 003
「お前、白鳥沢と絡んでんのか」
マジでか。マジなのか。
どんだけ鋭いのこの人。
青息吐息とは、まさにこのことだ。
正直に答えられるワケもなく、浅い呼吸を繰りかえす。心臓がいたい。息が苦しい。
「図星かよ、……あのなァ」
絶対めっちゃ怒られる。
親に叱られる直前の小さな子供のように。ぎゅ、と目を閉じて、叱咤されるのを待った。
ぽふ。……ぽふ?
「え、な、なに……どうした黒尾」
何がどうしてこうなったのか。
私は黒尾の腕のなかに収まっていて、おでこには、彼の胸板が当たっている。
初めて感じる、コーヒー以外の香り。柔軟剤だろうか。アロマのような優しい匂いがする。
「これ以上心配かけんなバカ」
「ま、また、バカって言う」
「バカだろうが。前にも言ったろ、俺ね、……お前のこと放っとけねえの」
とくん、とくん
黒尾の心音が伝わってくる。ゆったりしたテンポ。触れあうコート越しの肌。温かい。暖かい。
「会うたびに泣いてるしよ」
「う、……確かに、それは、うん」
「俺でよければ話聞かせてくれない? 別に、カオリが関わってる奴をどうこうしたりしねーから」
狂う。調子が。心臓が。
これ本当に黒尾鉄朗ですか。壊滅的に口が悪くて、粗暴で、目付きの悪い不良警官ですか。俄かには信じられない。
『……クロは、優しいよ』
ふと思い出したのは研磨の、ああ、そうか。うん。やっと分かった気がする。
そうだね。確かに。
黒尾は優しい人だ。