第13章 extra xxx 001
「……お前がいつまで経ってもそんなだから、俺は、この仕事辞めようと思ったんだ」
苦しそうな声だった。
喉から絞り出すようにして告げられた言葉。その言葉の意味がいまいち理解できなくて、俺は怪訝そうな顔になる。
「どういう、意味……?」
声に出して問えば彼は、岩ちゃんは、怖いくらいに澄んだ瞳でこう言った。
「綺麗な顔した男だと思った。こいつなら、お前となら、この町で頂(テッペン)取るのも夢じゃねえって、そう思った。要はお前を利用したんだ。最初はただそれだけだったけど、一緒にいるうちに友達よりも大切な存在になって、今じゃ相棒だと思ってる」
「……だったら何で?」
「大切だからだ。お前のことが大切だから、だからこそ、今のお前はもう見てられない」
彼は言う。
俺は、及川徹は、他人を傷付けすぎたのだと。
夢を叶える為なら何をしてもいいのか、と問うのだ。ガラス玉のように透き通った眼差しで。
それは結局、岩ちゃんの初恋の人を、俺がひどく傷付けたことが今回の引き金になった、という事実でしかないのだけれど。
彼はこうも言った。
自分の夢を一緒に背負わせてしまったことを、申し訳なく思っていると。
本当に申し訳なさそうに、苦悶の面持ちで、そう吐露したのだ。
「もう充分、お前は俺に尽くしてくれた。恩を返してくれた。だから、もう、誰かを傷付けてまで頑張らなくていい」
「…………」
「お前はお前の道を歩めよ、徹」
俺、ただ、岩ちゃんの側にいたかっただけなのにね。