第13章 extra xxx 001
待望の瞬間が訪れたのは、それから三十分後だったか、一時間後だったか。
空が白みはじめた頃だ。
ドアをノックする音が響いて、直後、聞こえてきたのは天童の間延びした声。
「ご注文の品ですよォ~」
俺とさほど変わらない肩幅が担いでいるのは紛れもなく、あの女だ。
薬で眠らされてるらしい。
ベッドに放り投げられても、彼女の瞼はピクリとも動かなかった。
「ご苦労さま」
「毎度ありィ」
軽やかな足取りで帰っていく天童を視線だけで見送る。しかし、何を思ったのか、やつはドアの前で足を止めて振り返った。
……どうでもいいけど、仰け反ってこっち見るのやめてくれないかな。不気味だから。すごく不気味だから。
しかも、ただジッとこちらを見つめるだけで何も言わない。一体何だって言うんだろう。
「……なに?」
「男前さんも拉致ってきましょうかァ」
「は……?」
驚いた。まさかそこまで読まれてるなんて。こいつどんだけ勘が鋭いんだろ。凄いを通り越して気味が悪い。
不快感を露わにして睨むと、天童はパッと両手を広げてハンズアップをしてみせる。
「余計なお世話、だね。帰ります」
神通力でも備わってんのか。
それとも極端に臆病なのか。
人のこころを読むだけ読んで天童覚は帰っていった。ゆっくりと閉じるドア。再び、部屋が静けさを取り戻す。
さて、それじゃあ電話かけますか。