第3章 逆らいの条件
そっと及川先輩の顔が近づいてきた。
目を閉じさせられる。
私は……耐えられるかな。
決心して受け入れたつもりだったのに、唇に触れた感触は忘れもしない岩泉先輩のものだった。
なんっ……。
「んんっ……」
クチュクチュ……
絡み合う舌。
驚いたけど嬉しかった。
久しぶりに会って最初にキスしたのが岩泉先輩で良かった。
愛おしさが溢れて必死に舌同士を絡ませ合う。
「んっ……あっ…」
「んっ……んっ…」
さっきまで冷たい視線を向けられていたのに、キスで思いが全部伝わってきた。
今まで会えなかったのを補うように求め合う。
唇が離れると、またすぐに触れたくなってしまう。
だけど、及川先輩にバレることを懸念して岩泉先輩は物欲しそうな目で私を見ながらも、キスはしてこなかった。
「ちょっ、岩ちゃん……!」
「あの日のお返しだ。こっちは一回お預け食らってんだよ」
「でも今の流れ俺がキスするべきだったじゃん!」
拗ね出した先輩に緊迫したムードもぶち壊れ、小さな二人の痴話喧嘩が始まった。
「でも前に岩ちゃんフェラしてもらってたじゃん!あん時俺もお預けされた!」
「そーゆうお前、こいつが引っ越す日一人だけセックスしたの自慢してきたよな?」
セックスしようとしてた最中なんて嘘みたいなくらいいつもの二人だった。
二年前、バレー部だった時も。
こうやってよく言い合っては、数分後には凄い連携で点勝ち取ってた。