第3章 ペリドットの癒し
「…その上、目の前で好きな女の唇を奪われてしまうとはな」
「あれは不可抗力と言うか、何と言うか…」
厭らしい口付けをされた不快感を思い出し、アレスはハンカチで唇を拭う。
「斬りつけてやろうかと思った」
だがあそこで俺が余計な事をすれば、お前とイオスの演技が全て無駄になる事は分かっていた。
「自制するのに苦労したぞ」
ようやくルヴァイドの顔に、表情が戻ってきた。
そこには、嫉妬や不甲斐なさや淋しさといった複雑な感情が渦巻いている。
ルヴァイドはアレスの頬に触れると、指を唇に沿わし、その輪郭をなぞった。
「…口付けても、良いか?」
アレスの体がびくりと震え、ルヴァイドの服を強く掴んだ。
「……して」
あいつの舌の感触を忘れるくらい、深くキスをして欲しいの。