第9章 ラブラドライトの叡智
「…あんまり長く憑依しても、魂が融合しちまう。俺は生命活動を維持してやるだけで、後の事はコイツ次第だな」
涙とルヴァイドの流した血で血みどろなアレスの頬を、バルレルは指でそっと拭ってやる。
それを見ていたルヴァイドは、悪魔でもこんなにも優しい所作が出来るのかと驚いた。
「でも、生きていてくれるだけで嬉しい」
酷く汚れた顔なのに、アレスの微笑みが美しくて泣けてくる。
「彼は絶対に私を裏切らない人だから」
アレスの紫紺の瞳が、悪魔に乗っ取られた身体を見据えて言う。
「私はルヴァイドを愛しているもの」
だから帰ってくるまで呼びかけ続ける。
愛しているから、信じ続ける。
『…俺は、お前に愛してもらえるような男ではない…』
アレスの愛を疑い、傷付けた。猜疑心がアレスを危険にさらした。そして部下も、自身の命でさえも失って──