第7章 クリソプレーズの囁き
「…アレスは僕を許してくれるかな?」
そう問い掛ければ、アメルは思わずといった様子で吹き出した。
「それこそ杞憂なんじゃないかな?」
お人好しの代名詞みたいな彼女が、ロッカに対して怒ってるとは思えないもの。
「むしろ、アレスさんの方がロッカに謝りたいと思っているかも」
優柔不断な優しさで温厚なロッカを怒らせたアレス。ある意味二人は似た者同士なのかも知れない。
「きっと、すぐまた会えるよ」
その時の彼女の立場が、敵か味方かは分からないけど。
ロッカはすっかり温くなったグラスを握りしめて、暗い天井を見上げる。
妹の言葉を頭に巡らせながら、思い出すのはレルムの村で見たアレスの笑顔。あの時すでに、人の良さが滲んだ微笑みに惚れていたのかも知れない。