第7章 クリソプレーズの囁き
二人の間に沈黙が流れた。
カーテンの隙間から、遠ざかった雷光が一瞬だけ差し込む。
「…話はそれだけかい?」
無言になってしまったアメルにそう促せば、アメルはしばらく思案した後ゆっくりと顔を上げた。
「…敵か味方かも大事だけど、それよりもまず、アレスさんの事が好きか嫌いかで考えたらどうかな」
あたしはアレスさんの事が好き。
あんなに優しい人は、見たことがない。
「僕は…」
「素直になって、ロッカ」
「でも彼女は、僕を嫌いになってしまったと思う」
怒鳴りつけた時のアレスの表情が、一瞬だけ泣き出しそうだった。
僕は彼女の嘘に傷付けられたけど、僕も感情に任せて彼女を傷付けた。
……好きになっていたからこそ、明らかになった事実に冷静では居られなかったのだ。
好きな女性に、村の敵である奴らの肩を持って欲しくなかったのだ。
この感情は嫉妬心から来るものだと、ようやく気付かされた。