第6章 アイオライトの涙
右足首を掬われて体勢を崩し、ぬかるんだ地面に倒される。
ぐちゃりとした泥と一緒に杖をつかんで反射的に振り回せば、山賊はいとも簡単に掴んでアレスの手の届かぬところに放り投げてしまった。
「よくもやってくれたなぁ。覚悟は出来てんだろうな?」
アレスは仰向けで手足を押さえつけられ、抵抗する力を奪われる。
「口を押さえろ」
詠唱をさせまいと、泥塗れの武骨な掌が口元を塞いだ。
「へへっ、楽しませてもらうぜぇ」
一人の男が、早くも下半身の衣服を脱ぎ出した。
アレスは背中から伝わる濡れた土の感触に嫌気がさしながら、力ない眼差しで雨粒を落とす暗い空を見上げた。
(…きっとこれは、罰なんだ…)
こんな不遇でも、ロッカ達の心を踏み荒らした事実には及ばないに違いない。