第6章 アイオライトの涙
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湿った南風が雨を呼んだ。
街道を行くアレスの足元は、傘をさす甲斐もなく 濡れて不快感を募らせる。
ぬかるんだ地面に足をとられる度に、気持ちまで沈み込んでしまう気がした。
『信じてたのに…!!』
ロッカの掠れた叫びが、今も耳に反響している。
あそこまで他人から感情をぶつけられたのは初めてで動揺しているが、その原因が自分の軽率な行動にあったのだから涙も出やしない。
「悪いことしちゃった…」
また会うことがあれば謝りたい。
しかし旅団の中にあってはそれも叶わないだろう。
自分はこれから彼らの敵の下に行くのだから。
「…まだ遠いわね」
手にぶら下げた簡易ランプで道の先を照らしつける。
思案に暮れながら歩いていたら、あたりはすっかり夜だった。