第6章 アイオライトの涙
(普通の女の子が傷を癒す力なんて持ってるモンかよ)
傍観に徹しているバルレルは、胸中で毒づいた。
そして先程から感じる違和感に、アレスと黒騎士を交互に見比べる。
目を凝らして良く見ると、二人の胸元あたりに黒い靄が掛かっている。
悪魔のバルレルにしか見えない、同じ悪魔の気配だ。
悪魔は精神体であるから、生肉よりも魂の甘露を好む…どうやら二人はどこかの悪魔の餌になっているらしい。
何となく面白くない気がするのは、自分の下僕に手を出されているからか。
(悪魔は独占欲が強くていけねぇな)
バルレルが嘆息したと同時に、ルヴァイドの声が聞こえた。
「行くが良い。今は追わん。だが今だけだ」
次に合いまみえた時には本気で掛からせてもらう。
「覚悟しておけよ」