第1章 カルセドニーの導き
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アレスは聖女の部屋で自分の荷物を拡げ、ここ数日で収拾した鉱物の鑑定をしたり、ノートに記録を録ったりしていたら、窓辺から差し込む日差しが夕暮れ時を示していることに気づいた。
「…喉が渇いたわ」
ロッカは飲料なら好きに消費して良いと言ってくれた。
アレスは素直に好意に甘えることにする。
部屋を出て台所に向かう途中の廊下で、アレスは人の気配を感じた。
相手も彼女の気配を察知したのか、声を発する。
「そこにおるのか?ロッカの言っていた学者さんとやらは」
声を掛けられたことに姿勢を正し、アレスは早々とリビングに顔を出した。
「初めまして。アレスと申します」
「わしはアグラバインじゃ。話はロッカから聞いておる。見ての通り何もないが、ゆっくりしていきなさい」