第5章 それは「今」と「過去」と「未来」の物語
彼女は続けた。
『私狡い女だよ。自分の私利私欲のためならどんな手でも使っちゃう女だよ』
「それは俺も同じだよ」
『弱いし、臆病だし、傷つきたくなくて逃げちゃうし』
「俺もだ。でも、もう逃げたくない」
『うん、私も。もう逃げたくない』
俺は、大きく息を吸った、
そしてゆっくりだけどしっかり彼女の目を見て言った。
「俺と結婚してください、。必ず倖せにします」
『……こんな私で、よければ』
彼女は顔を大きく歪め、また泣いた。
しばらくは泣いていて、泣き止む頃にはもう閉店の時間になっていた。
このままを一人にするのは俺の良心が許さなくて、俺の家に呼んだ。
あたたかいコーヒーを淹れ、落ち着きを取り戻す。
目は真っ赤になっていて「明日腫れちゃうかも」と恥ずかしそうにわらった。
そんな彼女が愛しくて、彼女の唇に優しくキスをした。
彼女はそれを受け入れる。
舌を絡ませて、俺達はお互いを求めた。
隣で眠るの横顔を見ながら俺は考えていた。
「愛する」というのは、目の前にあるモノだけを愛するんじゃなくて、
俺達が生きた時間だったり、これから過ごす時間だったり、
そういう「過去」も「未来」も「全て」を抱きしめることかもしれない。
間違いや勘違いを繰り返し、
競争や衝突を繰り返しながら、
正しいものと正しくないものの区別もわからないまま、
俺はようやく俺の中の「答え」に辿りついた。