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砂時計【菅原孝支】

第4章 それは「子供」と「大人」の「狭間」で歌った日




次の日、俺は大地に会いに行った。
前の日に電話したら二つ返事で了承してくれた。

居酒屋の席で、俺は昨日のことを話した。
及川に言われたことがこんなにも精神的に来るとは。
慰めてほしいわけではない。
ただ話を聞いてほしかっただけ。

「後悔しているのか?」

ビール片手に大地が訊ねる。
俺はグラスを握る。

「不思議だよな。年を重ねると、子供の時に理解できなかったことが理解できるんだ。

"あの時はああするべきだった"
"あの時はあいうべきだった"

そんな風に理解できる」

色々理解して、そして戻るわけない時間に恋い焦がれる。
昔の記憶から抜け出せない。

もしかしたら懺悔に近いかもしれない。
懺悔して無知だったあの頃を無かったことにしたい。
だから大人は……俺は勝手だと言われるのだろう。

「……あのさ」
「何?」
「俺、結婚したのよ」
「え、うん。知ってるけど……」

いきなり何を言いだすのだろう。
大地が結婚したのなんて知っている。
結婚式に呼んでくれたじゃないか。

「でな、今俺の奥さん妊娠してるんだよ」

その衝撃の事実に俺は目を見開く。

「マジで!?おめでとう!!うわー、大地が父親か!!なんかぽいな!!」
「なんだよ、ぽいって」

はははと笑う大地。
妊娠4か月らしい。
なんか悪いな。
俺なんかのためにここにいるなんて。
本当は奥さんの傍にいたいだろうに。

「まだ子供は産まれてないけど、でも俺は父親になるんだ」
「うん」

大地は、産まれてくる子供のことを考えているのだろう。
その顔は穏やかで父親の顔をして笑っている。

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