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砂時計【菅原孝支】

第4章 それは「子供」と「大人」の「狭間」で歌った日




「……」

彼女の名を呼んだ。
読んだからと言って何がどうなるわけでもないが。

"大事にできるか?"

大地の言葉が脳裏に浮かんだ。
そう聞くのも無理ないよな。
昔の俺は彼女を大事にできなかったから。

「今度は、ちゃんと大事にするよ」

それは約束する。
もう手放したくない。

やっとそう思えたのだから。

* * * * *

と付き合って一か月が過ぎた。
彼女とはうまくやれていると思う。

彼女の隣は居心地がいい。
昔と変わらないその雰囲気。
でもあの時と違うのは、俺は自分を慰めるために彼女を隣に置いていないということだ。

たったそれだけ。
たったそれだけのことなのに、あの時よりも居心地がよく感じる。

『また今度ね、菅原君』

この日も彼女とデートをした。
夜の10時を回った頃、彼女を送りに家まで行く。
見送った後、浮かれた心のまま家へ帰ろうとしたその矢先、あいつにあった。

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる。
もしかして今のところを見られていたのだろうか。

「ヨリを戻したって本当だったんだ」
「何しに来た、及川」

街灯の下、及川の顔が浮かび上がる。
俺は眉間に皺を寄せる。

「怖いなぁ。そんなに怒らないでよ」
「……」
「それよりさ、ここで立ち話もなんだからどっかに寄らない?」

あの時のように、彼はそう言った。
こんな夜遅くにやっている店なんてそうそうない。
俺は仕方がなく、自分の住んでいるアパートに連れて行った。

中へ入れば「へぇ、案外いい部屋だね」なんて言ってきて無性に腹が立つ。
湯呑にお茶を淹れて、テーブルを挟んであいつの真正面に座った。

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