第3章 それは「憧憬」と「嫉妬」と「傍観」し過ごした日
どくんと、血が廻った。
そんなことまでお見通しかよ。
「なんで好きって気持ちを隠そうとする?隠して逃げたって意味がないだろ。だから彼女を傷つけて泣かせるんだ」
その言葉に耳を疑った。
泣かせ……え?
「あいつ泣いたのか?」
「はぁ?そんなことも知らないのかよ。お前あの子の何を見てたわけ?」
「……っ」
「もういいよ。俺、お前なんかに負けないから」
及川はそれだけ言って去って行った。
負けないってどういうことだ?
あいつら付き合ってないのか?
いや、そんなことよりあいつ泣いたのか。
別れる時なんて泣かなかったのに……。
アイツの前では泣いたってことか。
それをいまさら悔やんだって意味がない。
全部及川の言うとおりだ。
俺はのことなど何も見ていなかった。
「スガ、大丈夫か?」
バスに戻れば、大地が心配そうに尋ねてきた。
何も心配することはない。
「大丈夫だよ、ただ連絡先交換しただけ」
「は、なんで?」
「同じセッターだからね。いろいろ思うことがあるんだよ」
もう忘れよう。
何もかも。
今は目の前のインターハイのことだけ考えろ。
あと少しで西谷が戻ってくる。
そしたら旭を連れ戻して、練習して、インターハイで優勝して……。
俺にはやるべきことがある。
色恋沙汰にかまってる暇はない。
そう思うことにした。
そうすることで彼女のことは忘れられていた。様な気がする。