第2章 それは「昔」の「過ち」と「傷」が作り上げたモノ
氷川の隣の席。
それは氷川に恋心を抱く俺にとっては、まさに天国そのものだ。
どちらかが教科書を忘れれば、席をくっつけて一緒に眺める。
俺は教科書なんて眺めずに横目で氷川を眺めていた。
隣から香る氷川の匂いに心臓はいつだて警報が鳴り止まない。
問題の答え合わせをする時は、氷川がいつも声を掛ける。
「この問題の答えってさ、これでいいの?」
その声を合図に俺は氷川のノートを覗き込む。
「あってるよ」「間違ってる」「わかんない」と答えるわけだが、
その時俺が注目しているのは問題の答えなんかじゃない。
氷川の筆跡だ。
なんかもう、女の子って感じの字。
それに「かわいいな」って思ってしまう俺は重症だ。
もしかしたら一種のストーカーかもしれない。
自分でも思うよ、気持ち悪いって。
でも仕方が無い。
好きな人のことは、全部知りたいって思ってしまうんだから。
あれから月日が経って、俺たちは中学2年生となった。
毎日、というわけではないが、何かしらあるたびにが協力してくれる。
そのおかげか、俺は氷川に告白された。
中学2年、4月8日、春。
人気の少ない校舎裏に呼び出されたかと思うと、
「好きです」
たった一言。
一瞬、思考回路が停止した。
思考回路が通常運転に戻ると、一気に顔が熱くなって心臓が破裂しそうになった。
「お、俺も好きです」
か細い声。
緊張で声がでなくて、それでも氷川はその声に反応して顔を真っ赤にして笑って。
その顔がかわいくて、また顔が熱くなった。
氷川とクラスは違ったが、恋人同士という関係があったおかげかクラスが違ってもいいとすら思えた。
あのあと、俺はのところに報告しに行った。
彼女は驚いた顔をした後に、笑顔で
『本当に⁉︎よかった!本当によかったね‼︎』
と、まるで自分のこたのように喜んでくれた。
満面の笑みで笑うから、傷ついていないものだと思っていた。
彼女の笑顔が、彼女の傷ついた心を隠していたのだ。
彼女は、笑顔の内側で泣いていたことだろう。