第5章 promise
名家出身者は、元々魂の質も高く霊力が飛び抜けて高い。霊力が高いと何かと神に目をつけられやすい、と以前田頭に教えてもらった気がする。目をつけられるということは、それだけ神隠しに遭う確率が上がると言う事。
だがそれを知る前の理仁は、てっきり「不細工だから見せたくない」という意味なのかと、失礼な解釈をしていた。それを知った田頭が呆れ顔になったのは言うまでもない。
「あら、さっきの審神者でしょ? 見ていたわよ、あのおっさんとの演練」
「ん……?」
声をかけられ、足を止めてみれば目の前に立ちはだかるように一人の女性が立っていた。赤髪碧眼の凛とした雰囲気を纏った少女の傍らには、焔を宿らせたような金色の瞳をぎらつかせた刀剣が控えていた。
「私は湯女。宜しくね? ああ、こっちは大倶利伽羅。うちの近侍」
紹介された大倶利伽羅は会釈する様子もなく、ふっと鼻で笑っただけですぐ顔を逸らされた。無愛想、なのかもしれない。そういうことにしておこう。
「俺は宝条理仁、こっちは近侍の山姥切。先程の演練か……傍から見ていてどうだった? 良ければ感想を聞かせてくれ。もし改善点があれば、是非聞きたい」
「改善点? ふーん、そんなことが聞きたいの? 変なの。別に、単純に練度の問題じゃない? もっと強かったらもう少し見れた戦いだったかも。あ、でも三日月を中傷にしてくれたのはすっきりしたわ! あそこの三日月、いけ好かないんだもの」
「へぇ……あの審神者は、結構有名か?」
「まぁ、それなりにね。古参審神者だから、威張ってるだけ。中堅の私達からすると、わりと迷惑」
そう言って彼女は鬱陶しそうに鎖骨へと流れ落ちる長い髪を、優雅な手つきではらりと後ろへ流した。湯女は腕を組むと、理仁をまじまじと見ながら口を開く。