第5章 ハイキュー!!/縁下力
次の日。
今にも振り出しそうな曇り空。
雨が降るより、曇りの日が身体的だるさが多い気がする。
昼休み、購買でパンを買おうと廊下を歩いていると、
数人の女子とが話している姿を見つけた。
が俺以外と話している姿を見るのは初めてだった。
胸の奥がモヤモヤして、嫌な予感が渦巻く。
彼女たちは、を連れてどこかへ行ってしまった。
俺は購買行くのをやめ、彼女たちの後ろを着いて行く。
たどり着いた場所は、多目的教室。
こっそりと扉を数センチ開け、中の様子を覗いた。
そして俺は見てみてしまった。
は、数人の女子からいじめられていた。
腕や足を殴られていて、うめき声が聞こえてくる。
「男に媚び売ってんじゃねーよ、ビッチが」
「つーかさ、由美が縁下くん好きって知ってるくせによく一緒に帰れるよね」
自分の名前が彼女たちの言葉から出てきて、心臓が跳ねる。
がいじめられている理由は俺が原因なのか。
「死ねよ、ブスが」
最後の一蹴りがみぞおちに入ったのか、は大きく咳き込む。
身体を小さくうずめて、何度も咳き込む。
心臓が痛い。
助けなきゃ。
そう思った。
でも、体が動かない。
俺は逃げるようにそこから立ち去った。
俺は見て見ぬフリをしたのだ。
関わるのが面倒だと思ったのだ、心のどこかで。
"いじめは最低だ"
"見て見ぬフリはよくない"
なんて自論を持っていて、
自分はこんな人間にはならないとまで確信があった。
だけど、それは口先だけの偽善に過ぎなかった。
俺は、ただの臆病者だ。