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【6月合同企画】相合い傘

第5章 ハイキュー!!/縁下力





赤色タイルを踏むゲームは、気が付いたら終わっていて俺達は何事もなかったかのように歩いた。
しばらく歩いていると、どこからか猫の鳴き声が聞こえてきて、
街灯下の段ボール、その中に子猫が2匹いて鳴いていた。

「捨て猫……?」

びしょびしょの手で猫を抱き上げる。
本当は飼ってやりたいけど、俺の家はペット禁止だから飼うことができない。
ごめんな、小さく謝って俺は段ボールの中に子猫を置いた。

雨に打たれる子猫に胸が痛む。
その時、が自分のバックから折り畳み傘を取り出して、子猫に差した。

『これで濡れないね!』

にこりと笑う。

って、ちょっと待って!
なんで傘持ってるのに差さなかったの!?

『え、だって差してくれる人がいるもん』

……かわいいって思ってしまった。
そして、俺の腕を引いて歩きはじめる。
肩を並べて傘の中、2人きり。

『でもね、本当の理由はね違うんだよ』
「え?」

は真剣な眼差しで俺を見た。
きっと傘を差さない理由を言っているのだろう。

『空だってね、泣きたいんだよ。でもみんな傘を差して見てみないフリ。かわいそう。だから私は傘を差さないで慰めてあげてるの』

ぱしゃん。
水たまりが跳ねた。

「じゃあなんで今俺の傘の中にいるの?」

ぱしゃん。
彼女の靴が濡れる。

『だって見てみないフリしなかったから』

ぱしゃん。
意味が分からなかった。

彼女は満面な笑みを浮かべて、水たまりの上で大きくジャンプをする。

ばしゃん。
ばしゃん。

何度も跳ねた。

「……濡れてるよ」
『知ってる』

ばしゃん。

『でも今は濡れたい気分』

今にも泣きそうな横顔で、水たまりを眺めていた。
俺が声をかけようとしたとき、ぱっと顔をあげた白い歯を見せて笑って

『また明日、バイバイ』

手を振って彼女は、走ってジャンプして回って踊って、そして姿を消した。

どうしたの。

いつものように、そう聞いていたら君は何か言ったのかな。
それとも初めて話したあの日みたいに『大丈夫』と答えて壁を作っていたのかな。

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