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【6月合同企画】相合い傘

第5章 ハイキュー!!/縁下力




足元の水たまりを踏んで、俺に近づいてくる。
全身びしょ濡れで、俺はカバンの中からタオルを出して渡した。

『大丈夫』

くるり。
また回った。
傘を差し出せば、笑って首を横に振った。
だけど、俺は無理やり彼女の腕を引いて、傘の中に入れる。


少し大きめのビニール傘。
中学生の二人が入ったところで窮屈にはならない。
それに少し、落ち込む自分がいて
早く大きくなりたいと思った。


彼女の家と俺の家が同じ方向にあると知って、これからは一緒に帰れるな、なんて思ってもないことを思ったりして。
なんで、そんなことを思ったのかが分からなくて胸のあたりが苦しくなった。


くしゅん。


その時、隣からくしゃみが聞こえた。
ついでに鼻水を啜る音も。

俺は溜息を吐いて、彼女にタオルを渡した。

「拭きなよ。風邪ひくだろ」
『……ありがと』

立ち止まって、おとなしく頭を拭きはじめる。
俺はそれをただただ見ていた。
『洗った方がいい?』「いいよ、平気」『わかった』

タオルをバックの中にしまい、二人また歩き出す。

『ねえ!』

突然俺の制服の裾を掴み、前方を指さした。
どうしたの、と聞けば彼女は言った。

『色違いのタイルがあるんだよ』

知っているよ。
毎日この道を通っているから。
それがどうかしたの?

子供の様な無邪気な笑顔で、白い歯を見せて、傘から飛び出した。
せっかく拭いたのに、意味ないじゃん。

雨の中、彼女の声が俺の耳に響く。

『赤色のタイル以外踏んじゃだめだよ』

下を見れば、赤色のタイルと白色のタイルが無造作に散りばめられていて、そういうことかと納得する。

小学生の低学年の時、俺も同じことをした。
そう、小学生の遊びだ。これは。
14歳になった今、そんな遊びはしない。
だけど彼女は、時折声を出しながら笑って赤いタイルだけを踏んでいた。


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