• テキストサイズ

【6月合同企画】相合い傘

第4章 ハイキュー!!/木兎光太郎




じっと海を眺めて木兎の答えを待った。
彼は「うーん」と言って頭を掻いた。

「俺、好きな人ができたんだよ」

ドクリ、と血が巡った。
手足が震える。
私は本当に馬鹿な女だ。

もしかしたら自分のことかな。
―――なんて、夢みたいなことを思って。

繰り返し。
繰り返し。

飽きもせず。
バカの一つ覚えみたいに。

私は「へえ」と答えた。
無言の時間が流れる。

雨はいつの間にか止んでいた。
それでも傘を閉じようとしない木兎。
気がついているはずだ、雨が止んでいるってことくらい。
なんで、閉じないんだろう。
もしかして、もう少し一緒にいたいと思ってくれたのかな。

なんて、また夢みたいなことを思った。

『雨、止んでるよ』
「知ってる」
『傘、閉じないの?』
「もう少し一緒にいようぜ!」

心臓が跳ねた。
え、心の中を読まれた?
木兎ってもしかしてエスパー!?

そんなわけないって。
こいつはただのバレー馬鹿。


その時、ぎゅっと手を握られた。
男の人の骨ばった大きな手。
驚いて手を引いたが、木兎はそれを許さなかった。
顔を上げると、いたずらっ子みたいに笑って

「やっとら俺の顔見た!」
『は、離して』
「なんで?」
『なんでも』
「嫌だ。離さない」
『な、なんで……?』
「なんでも!!」

やめて。
そんなこと言わないで。
期待しちゃうじゃん。
私、単純だからすぐに期待しちゃうんだよ。

からかっているだけなのか知らないけど、
これ以上私の心を掻き乱さないで。

我慢できなくて、私は涙を流す。
ポロポロとこぼれる涙に木兎は驚いていて、何度も謝っていた。
別に謝って欲しいわけじゃない。

『優しくしないで……』
「なんで?」
『期待しちゃうからに決まってんじゃん!』

八つ当たりしてしまう自分が嫌だ。
それにムカついてまた涙をこぼす。

「期待するってなに?」
『木兎が私のこと、す、好きなんじゃないかって……』

こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
告白、みたいじゃん、こんなの……。
いや、もう告白なんだけどさ!

顔、見れない……。


私は涙を流しながらうつむいた。
マフラーに顔を埋めて、鼻を啜る。


/ 42ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp